標的型攻撃などに利用されるスパムメールやフィッシングメールでは送信者 (エンベロープまたはメッセージヘッダの送信者) を詐称している場合が多くあります。
メールクライアントの多くはメッセージヘッダ (From ヘッダなど) から送信者を表示しています。
インターネットメールではこのようなスパムメールへの対策として SPF, DKIM, そして DMARC の送信ドメイン認証の仕組みが用意されていますが、InterScan MSS 9.1 Linux版 と IMSVA には送信ドメイン認証の検証機能に加え、独自のなりすましメール対策機能として「スプーフィングされた内部メッセージ」フィルタが用意されています。
- SPF (Sender Policy Framework) の検証
- グローバルDKIM適用ルールによる DKIM (DomainKeys Identified Mail) の検証
- DMARC (Domain-based Message Authentication, Reporting and Conformance) の検証
- スプーフィングされた内部メッセージのフィルタ
InterScan MSS, IMSVA ともに一般的なスパムメール対策の機能としてメールレピューテーション (Email Reputation Services, ERS) とポリシールールによるスパムメール検索 (「初期設定のスパムメール対策」など) が用意されており、なりすましメールの多くもこうした機能でブロックすることが可能です。しかし、なりすましメール対策を導入することでスパムメール対策のさらなる強化が可能となります。
対応する製品と機能
InterScan MSS ではメールサーバ (MTA) の機能は Postfix や sendmail など、連携する MTA が担います。そのため、SPF や DMARC の検証、DKIM の署名は MTA で設定する必要があります。
製品 | SPF | DKIM | DMARC | スプーフィングされた内部メッセージのフィルタ |
---|---|---|---|---|
InterScan MSS 7.1 Linux版 | 非対応 | 検証のみ対応 | 非対応 | 非対応 |
InterScan MSS 9.1 Linux版 | 非対応 | 検証のみ対応 | 非対応 | 対応 |
IMSVA 9.0 | 対応 | 検証のみ対応 (署名には暫定対応) | 非対応 | 対応 |
IMSVA 9.1 | 対応 | 検証・署名に対応 | 対応 (Patch 2 以降) | 対応 |
各機能の特長
各機能の特長を簡単に説明します。
SPF (Sender Policy Framework) の検証
- エンベロープの送信者が検証対象
- 内部・外部のドメインに関係なく送信者のメールアドレスが検証対象
- 直接インターネットからメッセージを受信する場所 (メールゲートウェイ) に配置されている必要がある
- DNS に SPF レコードを用意するだけで導入が比較的容易であるため、多くのドメインが SPF に対応している
- 内部ドメインに対して検証する場合、内部ドメインの SPF レコードを DNS に適切に設定する必要がある
グローバルDKIM適用ルールによる DKIM (DomainKeys Identified Mail) の検証
- From ヘッダの送信者が検証対象
- 内部・外部のドメインに関係なく送信者のメールアドレスが検証対象
- 直接インターネットからメッセージを受信する場所 (メールゲートウェイ) に配置されていない環境でも検証可能
- DNS に DKIM レコードを用意するだけでなく送信元のメールサーバでメッセージに署名する必要があるため、導入が比較的難しく、導入が進んでいるものの、DKIM に対応していないドメインも多い
- 内部ドメインに対して検証する場合、内部ドメインの DKIM レコードを DNS に適切に設定するのに加え、DKIM の署名を行うようメールサーバを設定する必要がある
DMARC (Domain-based Message Authentication, Reporting and Conformance) の検証
- 原則 From ヘッダの送信者が検証対象だが、SPF の検証ではエンベロープの送信者が対象となる
- 内部・外部のドメインに関係なく送信者のメールアドレスが検証対象
- 直接インターネットからメッセージを受信する場所 (メールゲートウェイ) に配置されている必要がある
- DMARC の機能自体は SPF と DKIM の基本的な送信者ドメイン認証の技術を基盤に、検証状況のレポートなどからドメイン管理者がより適したポリシーを設定するなど、スパムメールに対してより細かな対応を可能にするものであり、SPF と DKIM の延長線上にある技術である
- DNS に DMARC レコードを設定することは比較的容易だが、SPF, DKIM も合わせて導入する必要があるため、現状 DMARC に対応しているドメインは少ない
スプーフィングされた内部メッセージのフィルタ
- 内部ドメインのメールアドレスで送信者を詐称したスパムメールに対してのみ、有効
- 直接インターネットからメッセージを受信する場所 (メールゲートウェイ) に配置されていない環境でも利用可能
- 内部ドメインに対する DNS の設定不要